2009-04-22
(演・ユースケ・サンタマリア)と既に交際していた。
倉松と木塚は性格も反対で、現場では倉松が押せ押せであり、
木塚は全体を見渡し各方面との交渉も行うので冷静。
当然、現場ではよく衝突するがそれが良いバランスにもなり、
お互いの短所を補い、長所を活かす関係になっている。
倉松は「工事が終わったらお嬢さんと見合いさせてください」
と言ったり、スキーに一緒に行ったり、
僅かな時間山を降りて食事をしたり少しずつ積み重ねる。
だが、はっきりと口に出して好意は示さない不器用なところがある。
幸江も倉松の掴み所のない人柄に戸惑っていく。
しかし、最後には幸江は倉松に対して、
木塚と結婚するのには反対か?と切り出す。
この時の香取慎吾が、なんとも複雑な雰囲気を醸しだす。
少し昂揚しながら、僅かに自嘲しながら、
そしてそれらの感情の波を堪えながら、
木塚のことを褒め、彼を選んだ幸江の選択に誤りはないと、
寂しさの影を、ほんの少しだけ落とした笑顔で語る。
この時一瞬、倉松は幸江に背中を向ける。
彼女に顔を向けずに自分の気持ちを静めている。
さらに、父が幸江に倉松を一度勧めたことに対しては、
自分と一緒になっても苦労するだけだと卑下する。
駅で幸江を静かに見送り、その胸中はこれまでの想いが渦き、
そして倉松一人になった時、止めどない涙が流れるままに・・・。
しかも、木塚への手紙を渡す切なきメッセンジャーにもなる。
以降、倉松の木塚との顔合わせには複雑な影を秘めるが、
自分の中の嫉妬や自嘲と向き合い押さえ込みつつ、
黙々と作業に没頭し雑念を振り払うというよりも、
幸江の幸せを願う高潔な精神に昇華させていく。
少しずつ、黒部の山の季節が巡るが如く炎を沈め氷を溶かす。
台詞ではなく映像と演技で示していく。
それはそのまま、不器用で心根は照れ屋の男の生き様。
木塚と幸江の結婚式の日、式の映像と、
トンネルを掘る倉松の背中がクロスカットで映される。
今の自分には、このトンネルを掘ることのみ、という目で。
嫉妬や自嘲に自分を食い殺されることなく、
高潔なる敗者になるべくの美学。
工事を達成した後の、哀しみと慈しみを湛えた
深みをもった香取慎吾の優しい瞳に深い共感を覚えます。
決して彼は貧弱な人間ではなく強靭な人
表面のストイックさは繊細な内面に裏打ちされた、
いわば打たれて鍛えられた鋼のようなもの
それは高倉健さんに通じる強さではないでしょうか
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この一連の香取慎吾の微妙な演じ方が素晴らしい。
あのヘラヘラ笑って鼻の詰まった様な声を出す軽い男が
こんなに繊細な男だったのかと驚愕しました。
この人は孫悟空など弾けすぎる役ではなく、
複雑な内面を抱え込み抑制を必要とする役でこそ、
本領を発揮するのでないでしょうか。
その温厚さと荒々しさと切なさを秘めた香取慎吾を中心に据え、
仕事のために末の娘の死際を見舞うことのできない小林薫、
恋人を残し殉職する勝地涼、仇を取るべく黒部に挑む父・國村隼、
盆休みで故郷へ帰省しそれでも危険な黒部へ戻ってくる班員達。
それはまるで任侠映画の男達のドラマ。
DNAを滾らせる様に面白いわけであります。
DVDが発売したら是非ご覧いただきたい。
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