暗黒の真相 「ライト・テイクス・アス 〜ブラックメタル暗黒史〜」
2011-01-08


「ライト・テイクス・アス 〜ブラックメタル暗黒史〜」
についてのこと。


■「松嶋×町山 未公開映画祭」作品紹介
 [URL]
原題:Until The Light Takes US
2008年 アメリカ (93分)
監督:Aaron Aites


本作はノルウェーのブラックメタルグループの
ダークスローンのリーダー/ドラム担当のギルヴと、
バーズムのリーダー、ヴァーグの二人のインタビューを軸に構成。
メイヘムのユーロニモス、デッドらとインナーサークルの活動から
引き起こされた放火や殺人などの事件を追っていく。

アメリカ映画という位置付けですが舞台はノルウェー。
そこはブラックメタルの基礎を作ったとされる地。
穏やかな社会というイメージの底でおどろおどろしいものもまた生まれる。
ブラックメタルに限らず、スカンジナヴィア半島北欧諸国では
「ミレニアム/ドラゴンタトゥーの女」や、ラース・フォントリアー、
あるいはアキ・カウリスマキといった、危険や破壊や逃避あるいは無秩序、
反社会的といった感性とイメージのものも生まれている。

実際、ヴァーグの育った家庭環境も不自由の無いものだったらしい。
しかし青年期には反抗心に目覚め、マクドナルドを襲撃する様になった。
彼の言によると、古いものが壊されることに抵抗したらしい。
古いものというのは北欧の古来のものということだ。

この映画ではブラックメタルの反キリスト教、反商業の側面が語られていく。
1980年代前半に活動を始めたメイヘムを中心としたメンバーや仲間達は
レコード店の地下にたまり場を設け、インナーサークルが生まれる。
最初はダベるだけだったものが徐々に思想を持ち始め、
そしてキリスト教が北欧古来の文化を破壊していったとして、
キリスト教の国のアメリカ資本(マックなど)に対して反抗していく。

また彼らは殺人や放火など危険で過激で破壊的なことをやるほど、
メンバー内での地位が高くなるという考えになっていく。
その結果、キリスト教の教会を何件も燃やしていくことになる。

ノルウェーの宗教はキリスト教系のノルウェー国教会が
国民の約90%に信仰されているという。
当然ながら、国家からは反体制、テロリストと同様に見做されることになる。

反キリスト教というとサタニズム、悪魔崇拝という方向もあるけれども
ヴァーグの言に寄ればオーディン達北欧の神々への信仰を重んじることが、
キリスト教を破壊して古来の世界に戻す目的ということになるようだ。
キリスト教に限ったことではないが、宗教の布教段階においては、
大体が、元々そこで信仰されていた神々がいるわけで、
新しい神を押し付けられたというかたちにもなってくる。

当時の明確な様子はよく分からないが、それが執拗に行われていたならば
従わされた人々にとっては新しい宗教が破壊者ということになるだろう。
それに反抗するということは正当なこととも考えられる。

しかし、ヴァーグ達による教会への放火事件によって以降、
ブラックメタルは悪魔を崇拝するサタニストというレッテルを貼られる。
それによって模倣犯が生まれ模倣犯がオモシロ半分に悪魔の印を使ったりし、
ファンとアマチュアと悪魔崇拝と、ブラックメタルの誤ったイメージが
ともに混じりあって歪んでいったのがヴァーグ達の語る真相ということになる。

サタニストではないにしても、メイヘムのテッドの自傷行為と妄想、
自分の頭をショットガンで打ち抜いて自殺したこと、

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