「男たちの挽歌 - A BETTER TOMORROW」 〜 まだ挽歌は届くか
2011-03-02


ジョン・ウーの名作をリメイクした韓国映画、
「男たちの挽歌 - A BETTER TOMORROW」についてのこと。

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■「男たちの挽歌 - A BETTER TOMORROW」オフィシャルサイト
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人は、ジョン・ウー監督の作品にいつ触れたのでしょうか。
ジャン・クロード・ヴァンダムの「ハード・ターゲット」かもしれない。
ニコラス&トラボルタの「フェイス/オフ」かもしれない。
いや、トム・クルーズの「M:i:2」なのでしょうか。
いやいや、「レッドクリフ」が初めてなのかもしれない。

とにもかくにも、ジョン・ウーはハリウッドで活躍するアジア監督であり、
超大作「レッドクリフ」を引っ下げてアジアへの凱旋を果たした。
しかし、香港時代にジョン・ウーの名を知らしめた作品であり、
彼の作品でもっとも人気の高い作品であり、映画史上重要な作品と言えるのは
1986年に製作された「男たちの挽歌」に他ならないのではないでしょうか。

「男たちの挽歌」はその邦題の通り、男たちに捧げる男たちの映画。
弟想いのヤクザな兄と、警察官になる弟の、違う世界で生きる兄弟の絆が、
ときに強く結びつき、ときに激しく引き裂かれようとする様を、
血と汗と硝煙と涙と叫びと、およそ思いつく限りの男の世界を、
それらを極上の美学で綴り彩った、ザッツ・ジョン・ウー映画です。

この映画には綺麗なスクリーンよりも場末の薄暗いスクリーンが似合う。
鮮明に見えない幕の向こう側を見つめるうち、涙に濡れて本当に見えなくなる。
良い過ぎかもしれませんが、それだけ酔える映画です。

男の世界と言っても、ハード・ボイルドともダンディズムとも趣を異にする。
強いて言えばバイオレンスの中で生じる戦場の誓いともいうべき、
拳と感情がぶつかり合ったまま融合して理解しあう様な世界。
そう聞くと暑苦しそうにも聞こえるものの、ジョン・ウーは詩情豊かに、
寂しささえも漂わせて僕らの胸を締め付けていく。

そんなジョン・ウー印は、監督作品のみならず、プロデュース作品にも現れる。
日本のアニメ作品の「エクスマキナ」でさえ、感情表現が何よりも優先された。
監督がプロデュースするときは、個人差はあれども多かれ少なかれ、
実際の製作にも大きく食い込んでいく、いや、それを止めることはできないはず。

だから、韓国映画として製作され、韓国の監督がメガホンを取ると言っても、
ジョン・ウーが製作総指揮にあたる以上、過去から未来まで彼のコアである、
血を分けた我が子の様な「男たちの挽歌」をただの仕事にするわけがないと。
かくして24年の歳月を経て「男たちの挽歌」は甦った。
24年。80年代半ばから2000年代終わりまで、
その間、香港も韓国も、映画も社会も大きく変化しました。


ジョン・ウーが築き上げたはずの香港ノワールは、その後香港映画自体が変容、
ジャッキーもジェット・リーもチョウ・ユンファもハリウッドで活躍する様になり、
「ザ・ミッション 非情の掟」(99)や「インファナル・アフェア」(03)頃から復興、
アンドリュー・ラウ&アラン・マックがその後の燃焼が思わしくなくなると
ジョニー・トーが抜きん出て時代は彼に移っていったと思います。
その間に香港は中国に返還されるという大革命を通過します。


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