南三陸町戸倉地区波伝谷、早朝。
現地のお母さん達とボランティアの皆さんで、
上映会に来てくれる方に振舞う、昼食のお握りづくりが始まりました。
昔、家庭科の授業でお握りだけで高い評価を頂いたことが懐かしい。
今回は400個ほど、大量につくるので、ひとりがご飯をわけ、
ひとりが具材を入れる穴をあけ、ひとりがオカカをつめ・・・
という風に流れ作業でテキパキとどんどんできあがっていく。
お母さん達は毎日の熟練の技の結晶を披露する場ですが、
ボランティアの"男手"による無骨でいびつなお握りも混ざりあう。
しかし、そうした和気藹々とした雰囲気のなかでつくられ、
色々な形が並んだお握りは、それ自体がみんなの顔に見えてくる。
そして、そのお握りがみんなに少しの力とほっとする気持ちをくれるわけです。
さて、「波伝谷に生きる人びと」上映会会場は、
志津川自然の家という施設で、この施設は、
通常は学生の野外活動などで使用するものであったことから、
キャンプ場、炊事や宿泊設備、体育館等々が揃っていました。
そのため震災直後は避難所として、周辺の多くの人達の助けになりました。
また、現在では自然の家から見下ろせる場所にも仮設住宅が建っています。
ここは周辺で最も広く、最も集い易い場所であるため、
上映会場として選ばれたわけですが、結果としては、
現地の方々にとってもボランティアの方々にとっても、
縁のある場所だということでもこれ以上はない場所だったでしょう。
その上映は、朝の9時30分から夕方17時までの一大イベントです。
三章立ての映画は、二章まで完成している状態で三章を鋭意製作中という、
未完の段階での上映会となりましたが、それでも、
1日目の季節はずれな暴雨と暴風が直撃したなかで約70人の方々が、
2日目には雨が過ぎた後の青天の虹の下、約40人の方々が来てくださいました。
さらに、先のお握りづくりに留まらず、来場者案内、お茶だしのお世話、
会場設営や物資運搬等々のため、遠くは沖縄や福岡から集って頂いた、
ボランティアの皆様の気持ちと奮闘にはただただ頭の下がる思いです。
この人達は自分のできることなら何であっても体が動いていく。
その力がなければできなかったことが数多くあるはずです。
己を捨てて人のために。ごく普通のことができるのが、普通の人との違いだ。
生活を営んだ故郷のかつての綺麗な姿を懐かしんでいる方、
ボランティアの皆さんとの再会を喜んでいる方、それぞれの顔がある。
被災地での上映会というものをいくつかは見てきましたが、
この日の上映会はそのような特殊な一面を持っていました。
作品自体は今後、さらなる研磨を重ねていく必要がありますが、
僅かな時間触れた波伝谷と、この2日間で開かれた上映会には、
他に勝る何かも持っていることは感じられたと思います。
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