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女性が強くなった、と言われる現代社会ではありますが、
同じ地球上にはまだまだ苦難に見舞われる女性達がいます。
アフリカ女性の現実を描く「母たちの村」です。
西アフリカの小さな村。村には古くからの慣習として
女性の「割礼」儀式が根強く残っていた。
かつて娘の割礼を拒んだコレのもとに、ある日、割礼から逃げてきた
4人の少女達が「モーラーデ」を求めて逃げ込んできた。
コレは少女達を守る決意を宣言し、
古い伝統と男達の権威との戦いが始まるのだった。
一見、発展の遅れた世界によくある因習を打破するもののようですが、
「古い考え方」に囚われて動けない、というのは経済や文明の
発展のレベルとは関係のないものです。
日本においても、というより日本では特に、と言えるのではないでしょうか。
物語のキーワードとなる「モーラーデ」。
日本語字幕では「保護」と訳され、人物や家族に保護を求める、
役所への相談とは異なる、駆け込み寺のようなもののようです。
「保護」とはいえ、我々が想像する誰にも知らせずに匿うものとは違います。
家の門に踝ほどの高さに紐をかけ、外に向い宣言をします。
その気になれば簡単に乗り越えられるような貧弱なものですが、
追っ手も乗り越えなければ武器を手に襲っても来ない、
「保護」する側のコレもナイフで威嚇こそすれ、
基本的には言葉と毅然とした態度を武器とします。
「保護」を破ったものは蟻塚になる、という言い伝えがあり、
迷信深さから来るものでもあるかと思いますが、
追う側、守る側、双方に最低限の礼儀が感じられると思います。
一人の女性の高潔な精神に打たれて立ち上がる女性達。
そこに男達も共感するものが現れます。
その一人となるのがフランス帰りの村長の息子イブラヒマです。
彼はいわばこの村のヒーローであり、親族の反対を押し切って、
割礼を拒んだ女性と結婚を宣言するという、
一見すればよくある、欠かせない英雄であります。
しかし、外国という外の世界を見て新しい価値観や文化を学び、
自分の国の改善すべき点を問うという点で、
現実に必要とされる、生身の英雄と言えるのではないでしょうか。
(ちなみに、フランスは自由思想の発祥地と考えられています。)
もともと女性は強いものであり、男性はなんとかして
女性の力を封じてきた歴史があると思います。
割礼は、それをしなければ結婚できないという、
卑怯な根深い悪習だと言えるでしょう。
(特にこの村では一夫多妻制のイスラム教が中心。)
しかし、次の世代を生み出す力を持つ女性、特に母は強い。
さらにアフリカは人類の起源と言われている大地。
始まりの地から生まれた女性が弱くて良いわけがないでしょう。
生命の大地だからこそ、人間の尊厳も問う。
女性よ立ち上がれ、男性よ自らを問い直せという作品ではないでしょうか。
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